キミに拾われ、恋して、知って。〜鬼生徒会長と同居はじめます〜
「そもそも俺に、彼女なんかいない」
「え」
いやいやいやいや!
だってさっき、確かに女の子と一緒にいたじゃん!!
花火大会に女の子と二人きりとか、彼女以外なんだっての!!
……はっ!!
ま、まさか!?
「あんたまた女遊びして……!?」
「あいにく。前回の件からそういうのは一切してない」
「はぁ……」
「何だその疑いの眼差しは。言っただろうが、俺は今、お前で手一杯だって」
「……っ」
下まぶたに溜まった私の涙を、会長が親指ですくう。
「本当、お前はすぐ泣くな」
なんて言いながら、少し困ったような優しい瞳で私を見つめてくるもんだから。
こんな時だってのに、胸が高鳴ってしまって。
やめてよ。そういうの。
勘違いしそうになるんだから。
あんたの大事なものにでもなったような、変な錯覚に陥るんだから。
そんなの、勘違いも甚だしいのに。
「……っさっき、お祭りで見た」
「何を?」
「会長が、浴衣の女の子と楽しそうに話してるの」
私がそう言うと、「浴衣の女?」と言って瞬きを繰り返す会長。
会長は一度首を傾げると、「あぁ」と何かを思い出したかのように声を漏らした。