星夜光、きみのメランコリー
千歳くんの首の後ろに腕を回していたその美人ちゃんは、あたしに気付いて大きな目をこちらに向けた。
「ちとせ、この人だれ?」
芸能人のあの人に似てるな〜。あの、誰だっけ、千年にひとりの、あのアイドル…。
って、それよりも、さっきの映像が頭の中で何度も繰り返されて、あたし少しパニックなんですけど…。
「あぁ、天香」
「てんか?」
「そ。ていうか本当離れて。くるしい」
え、千歳くん、キスされたことにはもう突っ込まないの?
しかも、アレ?彼はなんて返してたっけ…。「ここは日本だから」とか言ってなかった?
外国だったらいいの?あ、挨拶だからとかそーいう感じですか?
「ちょっと天香、大丈夫?」
「あ、うん…?」
大丈夫、ていうか…。びっくりしちゃった。びっくりしすぎて、固まってた。
「こいつ、絵菜っていうの。俺の父親とこいつの父親が知り合いで、フランスにいた時から、腐れ縁みたいなもん」
「そ、そっか…」
そっか。腐れ縁。フランスにいた時からの…。へぇ…。
「へぇー、天香ちゃん、可愛いね。前髪短いけど」
「えな、いい加減離れないと怒るよ」
くっついて離れようとしない絵菜さんを、千歳くんは少し強引に離した。周りの人たちも、なんだなんだとふたりを見ながら通っていく。
…千歳くん、全然驚いてない。突然キスされて抱きつかれてるのに。こういうの、普通?千歳くんにとっては普通なの?
「ちょっと天香、大丈夫?」
…あぁ。だからあたしの腕にも、あんなふうに…。
あたしはすごく恥ずかしくて、思い出すだけで熱くなってたけど、千歳くんにとっては、特別なことではなくって…。
あたし、ひとりであんなにドキドキしてたのに。