星夜光、きみのメランコリー


千歳くんとは、少し仲良くなれたと思っていたけど、それはあたしの自惚れだったんだと思ってしまった。


「ちとせ、あたし夏休みずっと日本にいるつもりなの。だからちとせも夏休みに入ったら、えなと遊んでよ」

「えな、あのね」

「また色々デートしよ?あ、えな、横浜の中華街行ってみたい」


千歳くんに会って盛り上がっている絵菜さんが可愛くて、まぶしくて、なんだか見ていられなくなって…

あたしは、ペコリと頭を下げてその場から立ち去った。


「ちょっと、天香」


背中に千歳くんの声が被さってきたけど、どうしても振り返ることが出来なかった。

振り返ったら、絵菜さんがいる。千歳くんにさわってる、絵菜さんが…。

そう思うと、むねがくるしくなった。



…そうか、千歳くんは昔、フランスに住んでたことがあるんだ。知らなかった。

そうだよね、お父さんが画家って言ってたもんね。有名な画家。一色千秋さん。小さい頃から一緒にいたら、仲良くなっちゃうよね。


絵菜さん、かわいいもん。
すごくすごく、かわいいもん。


…すきに、なっちゃうよね。

すきじゃないと、キスなんかしないもん。


なぜか周りの景色とそれをつくる色たちを見ることが出来なくて、足元ばかり見ていた。


いつもより早いペースで動いていく、ローファーにまとわりついている色が跳ねている。

“どうしたの?てんか”

そう聞かれる。

でも、答えられない。


だいすきな色たちにも、今日はなぜか、やさしくできなかった。



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