星夜光、きみのメランコリー
・
☆
「失礼します」
「おう、入れ」
放課後、バッチャンに呼ばれた通りに進路指導室に向かった。遠心力に任せて、ぐるんとあたしの方を向いたバッチャンは、たくさんの資料を机に並べていた。
…うう。本当に進路の話をしなきゃいけないのか。まだ2年生なのに。
「ほら、ここに座れ。進路調査票持ってきたか?」
「あ…ハイ。何も書いてないんですけど…」
「まぁすぐに書けるやつの方が少ないよ。それは心配しなくていいが、就職か進学かはどう考えてる?」
「え…と、なんとなく進学かなって…思ってました。本当になんとなくですけど」
就職は頭になかった。まだまだ自分が社会で働いていける自信もなかったし、きっとお父さんとお母さんが反対する。
だけど、何かを学びたいって思いも、まだないというのも事実。
「そうか。まぁお前の成績だったら大学も行けなくはないけどな。どういうことをしたいとか、興味あるとか、あるのか?」
「興味、」
「おう、なんでもいいよ。すきなことは、ある?」
「うーん…」
好きなこと。好きなことというより、気持ちがいいことは、色と対話すること。色とのやりとりのまま、絵を描くこと。感じること。
「お前のことだから、美術系に進むかと思ったんだが」
…バッチャンも同じことを思っている。でも、本当のあたしのことは知らないから、あたしがそっちの世界にだけは進まないことは知らないはずだ。
それとも、あたしのこと、知ってたりする?
「興味ないのか?美大とか」
…もう、絵は描かない。自由なもの以外、描かない。
「…美大に行くほど、才能ないですもん、あたし」
傷が痛む。昔の苦い思い出にわざとすがるほど、あたしは強くない。