星夜光、きみのメランコリー
影も細かな線も加えられて、どんどんリアルなあたしが出来上がってきた。
一色くんの右手、まるで1つの生き物みたいだ。指先から生きた色が出されていくよう。人間が意思を持って書いてるとは思えない。
それくらい、美しい線をひく。
じん…と、右手が震えた。じわじわと湧き上がっていく欲が伝って、心臓もやがて動き出す。
…きれいな線。磨かれた才能。
うらやましい。だって、こんなの。
「……一色くんの、指先が欲しい」
思わず口から零れ落ちた言葉にハッとした。一色くんも、あたしの方を見ていた。
…なに、言ってんだろう。
「あっ…。ごめん。言ってみただけだよ」
なんとなく気まずくなって、横にしていた身体を起こした。
じっとあたしの方を見ていた一色くんは、少しの間黙っていたけど、起き上がったのを合図に見えていたあたしの右手首をつかんだ。
…冷たい手。もう、暑い季節は目の前なのに。
「…そーいえばさ、腕、大丈夫?」
「…!」
「…あぁ。やっぱ傷残ってんじゃん。つーか、こんなに切ってたの? 昨日」
じ…っと、一色くんはあたしの右腕の傷痕を見ていた。縦に入った線。きれいじゃないそれを見られることは、思ったよりも恥ずかしかった。
「…見なくて、いいよ。大丈夫だから」
昨日は、暗くてあまり見えなかったから、油断してた。
「女の子なのにこんな大きな傷痕、やっちゃったなあ、あはは」
また、腕がじんと痺れた。
…指先の感覚がない。今日は、調子が悪い日。