星夜光、きみのメランコリー
「…ちょっと。近すぎなんじゃない」
「……! わあっ」
少しずつ顔を出す色たちに心の中であいさつをしていたら、眉間に皺を寄せた一色くんの顔がものすごく近くにあった。
…あたし、いつの間に。
「またやっちゃったあ。人の目の色たちを見つめてたら入り込んじゃうこと多くて」
ごめん、と頭を下げる。
「…またって。彩田さん、いつもこんなことやってんの? 危険すぎるよ、色々」
「危険?」
「危険だよ。男にするのはやめといた方がいい」
…やめといたほうがいいって言われても。話しかけられたら、入り込んじゃうんだもの。
また呆れた顔を向けられた。「変わってるね」と言われないだけマシだ。いつもだったら、もうすでに言われていた。そして引かれていたはずだ。
一色くんは、何事もなかったようにスケッチブックに向き直って、また鉛筆を動かし始めた。
その様子を、今度は座ったまま見つめる。となりにいることを、許されているように感じた。
「……一色くん、本当に絵が上手だね」
「…」
…彼は、何も言わない。
きっと、彼の世界に入り込んでいるんだと思う。一色くんも、目の前の生まれてくる色や線たちと、会話しているんだと思う。
無意識に。
「——はい、あげるよ」
それから数分が経った後、一色くんはあたしが描かれた1枚の紙を綺麗に切り取って目の前に差し出した。
「わぁ〜〜! 可愛い!!」
「彩田さんナルシスト発言多くない?」
本当に綺麗な線。あたしだ。あたしだ。とても一色(いっしょく)の色から生まれたものだとは思えない。
鉛筆でこれだけ描けるっていう才能。学年一の王子に、こんな特技があったとは。