星夜光、きみのメランコリー
「…褒めても何も出ねーよ」
じっと絵を見つめていると、頭に何かが乗っかった。
それが一色くんの魔法の手のひらだと気づいて顔を上げると、今度は星野光のような瞳がこちらを向いていて。
…笑っている。瞳が動くと、色たちも喜んでいるようだった。
「…でも、俺は白黒でしか絵は描けねぇから。そう言ってもらえんのは嬉しい」
「……」
一色くんは、少し寂しそうに笑う。でも、眉毛を下げて静かに笑うのが、彼の普通なのかもしれない。
「でも、あんま人には言わないでくれる?絵描いてんの、知られたくねーの」
「……なんで?」
「…なんでって。ほぼ趣味で描いてるようなもんだし。彩田さんには、もう見つかっちゃったからいーけど」
ゴロンと、今度は一色くんが寝転がった。
たくさんの色たちが住んでいる芝生の上。
そこに吸い込まれるように一色くんが埋もれていくことが、なんだかすごく特別な感じがした。
「…うん、分かった。でもその代わり、また見に来てもいい?」
あたしも、そのとなりに寝転ぶ。身体を横にして彼を見ると、一色くんの目にまたあたしが映ったのが分かった。
「…いーけど。 それよりも、彩田さんは男との距離の持ち方をもうちょっと覚えた方がいーよ」
「え」
「俺に襲われても文句言えねーよ? 今の状況」
「ぎょっ!」
切りすぎた前髪から出たおでこを、思いっきりデコピンされた。痛すぎて、思わず変な声が出る。
…王子におでこを触られた。
汗、汗かいてたかもしれないのに。ていうかその前に、前髪切りすぎたのが恥ずかしすぎるよ。
タイミング悪すぎ。早く伸びてよ前髪。
「…き、きをつけます……」
「とか言いながら起き上がる気ないよね。まぁいいけど」
今日一番明るい、一色くんの笑い声が空に響いた。
生温かい風でも、なんだか心地よく思えた。
…たくさんの色たちに囲まれた景色に、一色くんの魔法の手と、あたしの傷ついた腕が転がっていた。
あたしも、一色くんの鉛筆とまではいかないでも、もしかしたら“ 友達 ” になれたのかもしれない。