星夜光、きみのメランコリー
・・・
一色くんに描いてもらった絵は、それからあたしのお守り的存在になっていた。
「えっ? これを王子に描いてもらったの? 本気で言ってる?」
人には言わないでくれと言われた一色くんのヒミツ。
それをファイルの中にそっと閉じ込めて、あたしの中でも内緒にしておこうと思ったのに、宿題プリントをあたしのファイルから取り出そうとした千種に、いとも簡単に見つかってしまった。
…ごめん、一色くん。やっちゃった。
一色くんに描いてもらった日の2日後の放課後、オレンジ色に染まりつつある教室で、千種が目を丸めたようにじっと見る。
服装は部活に行く格好。あたしと違って、千種はバリバリの運動部だ。その実力は、時期バレー部キャプテンって言われているほど。
「千種、内緒だよっ? 一色くんにバレたら、あたしが怒られちゃう」
クラスで、コソコソ話。王子と違うクラスでよかった。同じだったら、絶対バレちゃうもん。
「…別に言いふらしたりはしないけどさ。それにしても、あの王子がねぇ。すごいな、見事に3倍ほど美人に描かれている」
「ちょっと、それどういうこと?」
ウンウンと首を縦に振って絵を眺める千種。納得している場合じゃない!3倍増しって、失礼な!
「一色くんにもナルシストって言われたよ。2人して、ひどすぎない?」
「何言ってんの。アンタのナルシスト発言の方がひどいから王子もそう言ったんでしょう」
「ぶー」
反論できない。でも、本当にきれいだと思ったんだもん。あたしじゃなくて、その絵が。
白黒の世界とは思えない。まるで色が滲み出てくるような仕上がり。あの時に見た、色とりどりの芝生や木々を思い出す。
「とりあえず、よかったじゃない。せいぜい、ほかの女の子たちに見つからないようにすることだね」
眉毛を下げながら、千種が笑った。ヒミツの絵が入ったファイルを、ポンと頭に乗せられる。
白のスポーツバッグを肩にかけて、椅子から立ち上がる千種。その瞬間に、サラリと流れる短い髪の中で、キラリと光る色と目が合った。