星夜光、きみのメランコリー
“ てんかちゃん ”
ふと名前を呼ばれた。銀色に光るそれは、千種のチョコレート色の髪の中から覗いている。
「…あ!」
じっと目を細めて見ると、それはたしかに、千種の耳の後ろあたりで輝いていた。新しい子。千種の頭にこの色があるのは珍しい。
「可愛い色みっけだー!」
「はっ!? なに!?」
立ち上がって、部活に行こうとしていた千種の髪の毛に触れる。ツンと引っ張ってしまったからか、千種は少し顔をしかめてあたしの方を向いた。
「千種!千種!星のような子がここにもいるよ!」
ピンと出ていた子を引っ張り出す。確かにいる。星のような色。でも、一色くんの髪色とはまた違う。
これは、世に言う——。
「ちょっ…、これ、白髪じゃん!!」
…あ、やっぱり。
鏡で確認した千種が大声を上げた。「ギャー」という叫びから感じてくる、彼女の焦り。でも、千種の白髪を見たのは初めてだ。たまたま生えちゃっただけじゃないのかな。
「ええっ? 抜いちゃうのー? 可愛い子なのに!」
ピンと千種がその子を引っ張った瞬間に、その色はしゅんとした表情をした。感じてくる、ちょっとした悲しみ。
「可愛いもなにもあるわけないでしょう。あたしから見たら、完全にただの白髪!」
「ええ〜? でも、可愛い子だよ。あたしのこと名前で呼んでくれたもん。多分、千種の一部だからだよう」
「それでも!アンタにとっては“ お友達 ” かもしらないけど、あたしにとってはショックなものでしかないの」
ツンとそっぽを向いた千種は、そのままピンとその髪を引っ張った。小さく拗ねながら、千種の頭から離れて行く星の色。
…あーあ、かわいそうに。あの子も千種の一部だったのになあ。
フッと窓から吹いて髪を飛ばすと、その色はオレンジ色に染まる空にふわふわと流されていった。
「せっかく良い色だったのにぃ」
ぷぅと頰を膨らませる。だって可愛そうなんだもん。ちゃんと、あの子だって千種の色なのに。
「アンタにとっては良い色でもなんでも、あたしには要らない色なの。分かった?」
「…はーい」
「まったく。あんたの夢物語に付き合ってるからストレス溜まっちゃったのかもね」
「ううっ」
…言い返す言葉もない。