星夜光、きみのメランコリー
「色と会話って、どーいうこと?」
一色くんの手は離れない。まだ、あたしの左手をキュッと握ったまま、聞いてきた。
伝わってくる体温に、少しだけ心臓がうるさくなる。男の子にこんな風に触れられたのは初めてだ。一色くんは、それに気づいているのかな。
「…昔からね、色に心が見えるの。ただの色に見えないっていうか…、説明は難しいんだけど、なんていうかこう、色たちの想いとか考えていることが伝わってくるというか」
説明が難しい。今まで、あたしが色と話しているところを見て変に思ってきた人たちにも散々説明してきたけれど、すんなりと納得してもらえたことは一度だってなかった。
あたしには、ごく当たり前なこと。でも、周りの人はそうじゃない。だから、伝わらない。
「…ただ、『あか』とか『きいろ』とか、単純じゃないんだ。色には名前が決まっているけど、あたしにはそうは見えない。すべての色が、ちがう色に見えるっていうか」
「……」
「色も…、人間と同じっていうか……」
やっぱり、なんて言えばいいのかよく分からないや。それよりも、ぎゅっと力が込められている左手に意識が集中してしまって、説明どころじゃない。
それでも、一色くんは笑うことも馬鹿にすることもしないで、じっとあたしの話を聞いてくれていた。
…いつもは、大体このあたりで変な顔をされるんだけどな。やっぱり、一色くんだ。彼も大概、変わっている。あたしと同じ。
「…ふーん。だから、星野光を見てた時に“ 色は生きている ”って言ってたのか、お前」
…やっぱり、変な人。
そんな風に聞いてくれる人、はじめてだ。
「すげーな、その目。目っていうか、心? 頭? どこで感じてんのか、知らねーけど」
「…一色くん、変だなって思わないの?」
気がついたら、左手を覆っていた手のひらは離れていた。こもっていた温もりはだんだん冷えていって、少し寂しくなったけど、その代わりに一色くんは、うれしい言葉をくれたんだ。
「思わねー。そーいうの、彩田さんの力だと思う。大切にした方がいいよ」
…本当に、王子様みたいな人だと思った。