星夜光、きみのメランコリー
ハッとして、さっきの図書カードを見た。そこに書かれていた“ 美作 ” の文字は、ミマサカくんのことだったのか。
ということは、今日一色くんは、彼の代わりに図書委員をしていたということ。
「あっ、えっ、えと、彩田 天香っていいます。一色くんとは、最近友達になりました」
「彩田さん、俺知ってる」
「えっ?」
ミマサカくんの指先が、こちらを向いている。
「よくバッチャンから顔洗えって言われてるでしょ。何回か見たよ、その場面」
「えっ? 見なくていいですそんなの」
なんというところを見られていたのだろう。そんなことで顔と名前が知られていたなんて。恥ずかしいにも程があるだろう。
学年で噂になってたりしたらどうしよう。
「じゃあ、せっかくだし天香ちゃんって呼ぼ。俺のことは右京って呼んで」
「右京くん…」
「うん、よろしく」
…よろしく、だって。一色くんだけでお腹ぱんぱんになってた毎日なのに、また新たにイケメンと知り合ってしまった。
どうなってんだ。少女漫画だったら絶好調の展開だよ。読者様も羨むよ。こんなことって本当にあるのか。
「千歳悪いね。今日の部活、休めなくて。次の試合の話があってさ」
「もう分かったよ。いいよ別にただ座ってただけだし。ね、彩田さん」
「えっ? う、うん…」
話を振られた。確かに、ただ座って絵描いて話してただけだった気がする。あたしが来る前の時間は分からないけれど。