星夜光、きみのメランコリー


ハッとして、さっきの図書カードを見た。そこに書かれていた“ 美作 ” の文字は、ミマサカくんのことだったのか。

ということは、今日一色くんは、彼の代わりに図書委員をしていたということ。


「あっ、えっ、えと、彩田 天香っていいます。一色くんとは、最近友達になりました」

「彩田さん、俺知ってる」

「えっ?」


ミマサカくんの指先が、こちらを向いている。


「よくバッチャンから顔洗えって言われてるでしょ。何回か見たよ、その場面」

「えっ? 見なくていいですそんなの」


なんというところを見られていたのだろう。そんなことで顔と名前が知られていたなんて。恥ずかしいにも程があるだろう。

学年で噂になってたりしたらどうしよう。


「じゃあ、せっかくだし天香ちゃんって呼ぼ。俺のことは右京って呼んで」

「右京くん…」

「うん、よろしく」


…よろしく、だって。一色くんだけでお腹ぱんぱんになってた毎日なのに、また新たにイケメンと知り合ってしまった。

どうなってんだ。少女漫画だったら絶好調の展開だよ。読者様も羨むよ。こんなことって本当にあるのか。


「千歳悪いね。今日の部活、休めなくて。次の試合の話があってさ」

「もう分かったよ。いいよ別にただ座ってただけだし。ね、彩田さん」

「えっ? う、うん…」


話を振られた。確かに、ただ座って絵描いて話してただけだった気がする。あたしが来る前の時間は分からないけれど。


< 35 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop