星夜光、きみのメランコリー
・・・
「エッ? また王子と会ってたの?」
目の前の白いスポーツバッグに、少し焼けた細い腕が乗っかった。ペシャッと潰れたそれの上に、千種のきれいな顔がさらに乗る。
鞄から、お弁当を取り出した。千種もスポーツバッグから同じものを出した。
「ちょっと、どーいうこと。詳しく聞かせなさいよ」
美味しそうなお弁当も、今の千種にとってはどうでもいいらしい。きれいな黄色の卵焼きを箸の先に刺したまま、目はあたしから動かない。
土曜日に千歳くんと会った話をした。そしたら、千種は想像していたよりも反応してしまって、今この状態。
学年の王子が相手となったら、女の子はみんなこんな風になるのだろうか。
「詳しくって言ったって…。月の光が見たくて公園に行ったらそこに千歳くんがたまたまいたっていう…、それだけだよ」
「ナニソレ? あんたたち遭遇率高くない? 磁石みたい」
磁石。その例えに少し笑ってしまった。どっちがN極でS極かな。どっちでもいっか。
千種の美味しそうな卵焼きがすべてなくなった。ちゃんと味を噛み締めて食べているのだろうか、この子は。
「大体、そんな時間にひとりで学校の近くまで来てたの? 王子云々の前に危ないよ!」
「うん、それ千歳くんにも言われた」
「王子やさしいな!!」
…やさしいのかなあ。あの時はちょっと怒ってたような気がしたけど。
あれも心配して怒ってくれていたのか。そう考えると、やっぱり彼のやさしさなのか。
「でも、意外だな〜! 天香が王子とそんなに仲良くなっちゃうなんて。女子に広がらないように気をつけなよ、恨まれるよ」
「う、うん…」
恨まれるのは、いやだな。
でも、恨まれるほど仲良いってわけでもなさそう。わたしは千歳くんのことはすきだけど、彼がどう思っているのかは分からないし。
もしかしたら、鬱陶しいって思っているのかもしれないし。