きみだけに、この歌を歌うよ
「ごめん……梓。今日は帰るね…」
「え、なに?やっぱりケンカ?」
「ほんとごめん!また明日ねっ!」
じわじわと瞳を濡らす涙が溢れる前に、梓の前から逃げるように走った。
「ちょっと菜々っ⁉」
愁が歩いていったその先。
ずっとむこうまでまっすぐに続く桜のトンネルの中を走った。
走って、走って、走って。
むかった先は、私の心を癒やしてくれる場所。
なんども泣いて、なんども笑った場所。
愁との、思い出が残るあの場所に行きたくなった。