きみだけに、この歌を歌うよ
「だけど……ちゃんと声が出るようになれば、そのときはまた浜辺にきてほしい」
「ぐすっ……え?」
「菜々に言われていろいろ考えて……声がでるようにリハビリ、やっぱり行くことにした」
涙でぬれた顔をあげてみると、九条くんは優しい目で私を見下ろしていた。
「あれ……なんで泣いてんの?」
「だって九条くんがっ……!私のこと、迷惑みたいにいうからぁっ…!ぐすっ…そうしてくれるとありがたいとかぁっ」
「なんで?そう見えた?菜々のこと、迷惑なんか思ったことねぇよ?」
柔らかい笑顔。
寂しい顔をして笑ってばかりいた九条くんが、久しぶりに見せてくれた明るい表情だった。