きみだけに、この歌を歌うよ
「だろ?ぜったいにここがこの花火大会のベストポジションだろ?」
「うん、それは間違いないね〜っ!連れてきてくれて本当にありがとう、九条くん!」
絶え間なく夜空を色づける花火ももちろん綺麗だけど、また海風も気持ちいい。
本当に、ここ以上にいい場所なんてないと思った。
ドン、ドン、ドン……。
私と九条くんが並んで見上げる先に、菊の花のような大輪の花火が絶えず打ちあがる。
「……花火、母さんも見るのを楽しみにしてたんだよなぁ。このバルコニーから、ビール片手に見るんだって言ってよ」
「……そっかぁ」
ひときわ大きな金色の花火を眺めているその目は、寂しそうだった。