きみだけに、この歌を歌うよ
「母さんが見たかったものを、俺のこの目に焼き付けておこうって思ってな」
「それでひとりで見てたんだ…?」
「そういうこと」
九条くんは優乃ちゃんに、花火には興味ないって言っていた。
それなのにこの場所で空を見上げていたのは、お母さんが見たい景色だったからなのか。
「母さんがやりたかったこと、見たかったことを代わりに俺がしてやろうってな。もう母さんの姿を見ることはできなくなったけど、たぶん……近くにいるような気がするから」
「いるよ、ぜったい…。だってお母さんだもん。今までもずっと一緒にいたんだから」
ねっ?って首を傾げて笑いかけると、九条くんも「そうだな」と目尻にシワをよせ笑った。