きみだけに、この歌を歌うよ
ピュー、っと夜空に黄色い筋がのぼっていく。
空高くまであがってバン、と弾けてはしだれた柳のように広がる。
金色の稲穂をたらしたような花火が、ひとつ、ふたつと空に浮かんだ。
「そういえば……声、だいぶよくなってきたね?もうほとんど元どおりじゃない?」
1ヶ月前の九条くんの声は、掠れてしまって話すことですらつらそうだった。
とてもじゃないけど、歌えるような状況ではなかったのに。
「まぁ、一応まいにちリハビリいってるからな。だけどまだ、高音は苦しくてだせないんだ」
「じゃあ、もうひとふんばりだね。あとちょっと、ファイトだよ!」
「はは、うん…ありがとう。イベントまであと2週間あるしできる限りのことはやるよ」