神様修行はじめます! 其の五のその後
 地面に身を横たえたジュリエッタの体がジワジワと浮き上がって、下からチラリと鬼の腕が覗く。


 てっきり押し潰されたと思ったのに、鬼は生きていた。


 両腕でジュリエッタの体を持ち上げて、なんとか抜け出そうとしている。


 ジュリエッタはその巨体で鬼に巻き付き、強烈な力で締めあげた。鬼は、中からジュリエッタを引き千切ろうと暴れている。


 雷光と、冷気と、蔦と騒乱が視界いっぱいに入れ乱れ、この場はまさに修羅場と化した。


 あ、あたしも負けていられない!


 ここで逃げ出すわけにはいかないよ! 少しでも滅火の力が通用するなら、あたしの力で……!


 ふと、頭上が暗い影に覆われた。


 振り返ると、すぐ目の前に大きな青色の壁がある。


 反射的に上を見上げて、ゾッと硬直した。


 ……鬼!


 しまった! いつの間にか背後に回り込まれていた!


 濁った眼が射るようにあたしを見ていて、全身が怖気立った。


 禍々しい邪気が周囲にムワリと立ち込め、鼻の奥を強く刺激する。


 圧倒的な異形の存在感に、あたしの体はピクリとも動けないし、悲鳴も出ない。


 どうしようもないほど、太刀打ちできない現実が目の前に立ち塞がっている。
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