神様修行はじめます! 其の五のその後
「少し目を離すと、すぐこれだ。まったく僕の仲間たちはなにをしでかすか油断ができない」


 この切迫した場にひどく不似合いな、静かな声が聞こえる。


 すると道場の隅に積み重なったガレキの山が、ガラガラと音をたてて崩れ落ちた。


 そこに、ひとりの見目麗しい青年がスッと立つ。


 姿勢の良いその姿を、あたしはノドの奥をえぐえぐ鳴らして、鼻を啜り上げながら見上げた。


 ……やっと、やっと来てくれた。


 こんな状況になってるってのに、遅いよバカ。


 塔子さんのお腹の赤ちゃんが危ないんだよ。


 絹糸もセバスチャンさんも大ケガしてる。


 ジュリエッタなんか、全身から体液ビュービューで大変なんだよ。


 それに……。


 しま子が、しま子が……。


「しま子が記憶を取り戻したんだよ! 門川君!」


「わかっている」


 涙声で必死に叫ぶあたしに、門川君は床の上に倒れたしま子を見ながら淡々と答えた。


 同時に、絹糸たちの体が真っ白な術光に包まれる。


 すると、たった今まで苦痛に歪んでいた塔子さんの顔から、スーッと険しさが引いていく。


「永久よ、遅いわい」


 回復術を受けながら絹糸がブチブチと文句を言った。


 でもその口調にはホッとした響きがある。


 仲間のみんなも、それまでピンと張りつめていた緊張が一気に緩んだ表情で、安心したように門川君を見つめていた。
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