神様修行はじめます! 其の五のその後
 あんなビルみたいに巨大で分厚い氷を、こんな短時間で破壊するなんて!


 バケモンかこいつら! あ、そうか鬼だもん。そりゃバケモンだわ。


「か、門川君、鬼たちが!」


「大丈夫。準備は整った」


 まったく慌てる様子のない門川君の手元の宝珠が、輝きを増しながら形を変えていく。


 あれは……鳥? 小鳥だ。


 小鳥に姿を変えた宝珠が、門川君の手から飛び立って鬼たちの元に真っ直ぐ向かっていく。


 そして順々に地面に下りたかと思うと、音をたてて砕け散った。


 すると鬼たちをグルリと取り囲むような円陣が現れて、不思議な光彩を放つ。


 水の揺らぎの動きに似た、奇妙に屈折した影と光が、ユラユラと鬼たちを取り囲んだ。


 その様子を見ているうちに、なんだか軽い眩暈がしてきて、あたしはその場にガクリと座り込んでしまった。


 な、なんだろう? まるで水の中に沈み込んだみたいな、地上とは違う場所に足を踏み込んだ感覚がする。


 強い違和感に頭がボーッとして、意識を保っていられない。


 鬼たちもひどく虚ろな目をして、あれだけ暴れていたのがピクリとも動かない。


「ここはキミたちの居場所ではない。いるべき場所に戻りたまえ」


 門川君が目を閉じて両手で素早く印を組む。


『混沌と秩序たらしめる、世の千の理よ、この界を開け。悠久の刻を守護する門を開くは、我の中にある万の鍵。有り得ぬ矮小も、圧倒も、道理さえも、この純然たる存在と真理の前には、ただひたすらに無力なり』
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