婚活女子とイケメン男子の化学反応
~零士side~
「楓ちゃんは、パパ似なんですね~」
楓が産まれて3日目の朝。
病室にやって来た若い看護師が俺と楓の顔を見比べながらクスリと笑った。
「あ~確かに顔は俺ですよね。でも、ほくろは妻とおんなじ場所にあるんですよ。遺伝子って凄いですよね。思わず感動しちゃいましたよ」
俺が得意げにそう話すと、看護師が「どこですか?」と興味津々に食いついた。
鈴乃もベッドから身を乗り出して、「どこどこ?」と目を輝かせている。
それならばと俺は立ち上がり、眠っている楓のオムツを開いて両足をそっと持ちあげた。
「ほら、お尻の割れ目にあるほくろ。鈴乃もこの場所に」
『あるんですよ』と言いかけた言葉を呑み込んだ。
鈴乃が恐ろしい顔で俺を睨んでいたからだ。
気まずい空気の中、俺は楓のお尻を黙ってしまった。
「あの……私、ちょっと用事を思い出したので失礼しますね」
そう言って看護師も逃げるように病室を出て行った。
「もう!! ホント信じられない! どうしてこんな恥ずかしいことするの!」
鈴乃が盛大にため息をついた。
「いや……マジでごめん」
「こんなの私と楓に対するセクハラだよ!」
「はい。おっしゃる通りです」
確かに無神経だったと反省する。
二人のほくろの位置が同じだということがたまらなく可愛くて、つい浮かれてしまったのだ。
「ほんとに悪いと思ってるの?」
「思ってるよ。ごめんな、鈴乃」
「ほんとにちゃんと反省した?」
「反省した。だから許して」
鈴乃を抱き寄せて甘く耳もとで囁くと、鈴乃も俺の背中に手を回し甘えるようにしがみついた。
「も~仕方ないなあ」と鈴乃が呟いた時だった。
突然、病室のドアがガラガラと開けられた。
「待って、鈴乃さん! この男を簡単に許しちゃダメよ! 何やらかしたのかは分からないけど、零士にはもっと反省させた方がいいと思う!」
振り向かなくても分かる。
声の主は麻里奈だ。
昨日兄貴とお見舞いに来て、てっきり一緒に帰ったものと思っていたが、麻里奈だけは残っていたようだ。
「何だよ、麻里奈。分からないくせに首つっこんでくんじゃねえよ。それにまだ面会時間じゃないだろ? 日曜の朝っぱらから何の用だよ」
「零士さん! そんな言い方!」
早くも鈴乃に怒られた。
「そうよね~そんな言い方しなくてもいいわよね~。せっかくお義母さんから預かった品を届けに来てあげたのに」
麻里奈はブツブツ言いながらバックから袋を取り出した。
「はい、鈴乃さん。これね。楓ちゃんの肌着よ。お義母さん、昨日渡しそびれちゃったんだって」
「すいません。麻里奈さん。ありがとうございます」
「いいの、いいの。年下だけど一応姉なんだから。これくらいさせてね」
「は? 姉!? おまえ、今…姉って言った?」
麻里奈の発した衝撃的な言葉に思わず耳を疑った。
「言ったけど」
「え…おまえ、兄貴と入籍したの?」
「うん。もう半年以上も前だけどね。あれ?言ってなかった?」
麻里奈はケロリと言う。
「聞いてないよなあ? 鈴乃」
「う~ん。私は何となく気づいてたけど。だって、『おばさん』じゃなくて『お義母さん』って呼んでたし。てっきり零士さんも気づいてるんだと思ってた」
「あ…そう」
「なんだ…知らないのは零士だけだったんじゃない。零士って意外と鈍いのね」
麻里奈がプッと笑う。
悔しいけれど言い返せない。
「因みに式は半年後よ。英士が東京勤務になってからこっちで挙げる予定なの。その時は宜しくね」
麻里奈がにこりと笑う。
「何? 兄貴って半年後にこっち戻ってくるの?」
「うん。上司に言われたそうよ。だから、今から私が式場探したり、マンション探したりしてるのよね。今日もこれから回るんだけど」
「ふーん」
まあ、幸せそうで何よりだ。
「あとは赤ちゃんかな~。私も早く欲しいなあ」
楓の寝顔を眺めながら、麻里奈がそう口にした。
「まあ、頑張れよ」
「やめてよ」
「何?」
「なんか零士が言うとセクハラに聞こえるから」
「おまえ、ほんと失礼な奴だな!」
そんな俺と麻里奈の会話を聞きながら、鈴乃が可笑しそうに笑っていた。
「楓ちゃんは、パパ似なんですね~」
楓が産まれて3日目の朝。
病室にやって来た若い看護師が俺と楓の顔を見比べながらクスリと笑った。
「あ~確かに顔は俺ですよね。でも、ほくろは妻とおんなじ場所にあるんですよ。遺伝子って凄いですよね。思わず感動しちゃいましたよ」
俺が得意げにそう話すと、看護師が「どこですか?」と興味津々に食いついた。
鈴乃もベッドから身を乗り出して、「どこどこ?」と目を輝かせている。
それならばと俺は立ち上がり、眠っている楓のオムツを開いて両足をそっと持ちあげた。
「ほら、お尻の割れ目にあるほくろ。鈴乃もこの場所に」
『あるんですよ』と言いかけた言葉を呑み込んだ。
鈴乃が恐ろしい顔で俺を睨んでいたからだ。
気まずい空気の中、俺は楓のお尻を黙ってしまった。
「あの……私、ちょっと用事を思い出したので失礼しますね」
そう言って看護師も逃げるように病室を出て行った。
「もう!! ホント信じられない! どうしてこんな恥ずかしいことするの!」
鈴乃が盛大にため息をついた。
「いや……マジでごめん」
「こんなの私と楓に対するセクハラだよ!」
「はい。おっしゃる通りです」
確かに無神経だったと反省する。
二人のほくろの位置が同じだということがたまらなく可愛くて、つい浮かれてしまったのだ。
「ほんとに悪いと思ってるの?」
「思ってるよ。ごめんな、鈴乃」
「ほんとにちゃんと反省した?」
「反省した。だから許して」
鈴乃を抱き寄せて甘く耳もとで囁くと、鈴乃も俺の背中に手を回し甘えるようにしがみついた。
「も~仕方ないなあ」と鈴乃が呟いた時だった。
突然、病室のドアがガラガラと開けられた。
「待って、鈴乃さん! この男を簡単に許しちゃダメよ! 何やらかしたのかは分からないけど、零士にはもっと反省させた方がいいと思う!」
振り向かなくても分かる。
声の主は麻里奈だ。
昨日兄貴とお見舞いに来て、てっきり一緒に帰ったものと思っていたが、麻里奈だけは残っていたようだ。
「何だよ、麻里奈。分からないくせに首つっこんでくんじゃねえよ。それにまだ面会時間じゃないだろ? 日曜の朝っぱらから何の用だよ」
「零士さん! そんな言い方!」
早くも鈴乃に怒られた。
「そうよね~そんな言い方しなくてもいいわよね~。せっかくお義母さんから預かった品を届けに来てあげたのに」
麻里奈はブツブツ言いながらバックから袋を取り出した。
「はい、鈴乃さん。これね。楓ちゃんの肌着よ。お義母さん、昨日渡しそびれちゃったんだって」
「すいません。麻里奈さん。ありがとうございます」
「いいの、いいの。年下だけど一応姉なんだから。これくらいさせてね」
「は? 姉!? おまえ、今…姉って言った?」
麻里奈の発した衝撃的な言葉に思わず耳を疑った。
「言ったけど」
「え…おまえ、兄貴と入籍したの?」
「うん。もう半年以上も前だけどね。あれ?言ってなかった?」
麻里奈はケロリと言う。
「聞いてないよなあ? 鈴乃」
「う~ん。私は何となく気づいてたけど。だって、『おばさん』じゃなくて『お義母さん』って呼んでたし。てっきり零士さんも気づいてるんだと思ってた」
「あ…そう」
「なんだ…知らないのは零士だけだったんじゃない。零士って意外と鈍いのね」
麻里奈がプッと笑う。
悔しいけれど言い返せない。
「因みに式は半年後よ。英士が東京勤務になってからこっちで挙げる予定なの。その時は宜しくね」
麻里奈がにこりと笑う。
「何? 兄貴って半年後にこっち戻ってくるの?」
「うん。上司に言われたそうよ。だから、今から私が式場探したり、マンション探したりしてるのよね。今日もこれから回るんだけど」
「ふーん」
まあ、幸せそうで何よりだ。
「あとは赤ちゃんかな~。私も早く欲しいなあ」
楓の寝顔を眺めながら、麻里奈がそう口にした。
「まあ、頑張れよ」
「やめてよ」
「何?」
「なんか零士が言うとセクハラに聞こえるから」
「おまえ、ほんと失礼な奴だな!」
そんな俺と麻里奈の会話を聞きながら、鈴乃が可笑しそうに笑っていた。