婚活女子とイケメン男子の化学反応
~鈴乃side~
「えっ!? これ零士さん? あっ、野球少年だった…とか?」
「違うけど…」
零士さんはバツの悪そうな顔をして私から目を逸らす。
「じゃあ、何でこの髪型?」
「それは…」
言葉を詰まらせた零士さん。
私は首を捻りながら再びアルバムへと視線を戻した。
卒業アルバムの中の零士さんは何故か坊主頭だったのだ。他のページのクラス写真の方はお洒落な髪型で写っているのに、個人写真だけはまるでお坊さんのように髪がない。
「生活態度が悪過ぎて先生に頭丸めて反省しろって言われたんだよ。ほら、もういいだろ」
零士さんがアルバムを急いで閉じると、英士さんが「あっ」と声を上げた。
「そうか。零士が保健室のベッドに女の子連れ込んで騒ぎになった時だな。今考えると、零士はホントにませガキだったよな」
英士さんが缶ビール片手に笑いながらそう言った。
「兄貴……鈴乃も聞いてるんだけど」
零士さんは怖ろしい顔で英士さんを睨みつけた。
英士さんはハッとしたように私を見る。
「あっ……ご、ごめんね、鈴乃さん」
何とも気まずい空気になった。
「いえ、あの……私なら大丈夫ですよ。中学生の頃の話ですし、思春期の男の子なんてそんなものですよね」
場の空気をこれ以上壊さないようにと笑顔を作る。
本当はちょっと複雑なのだけれど。
「違うのよ、鈴乃さん。零士は被害者なの」
「え?」
「麻里奈、もうその話はいいから。鈴乃も嫌な思いさせてごめんな」
零士さんは話を切り上げアルバムをしまった。
「あ、あの…聞きたいです。零士さんのことなら、何でも知っておきたい」
「鈴乃」
零士さんは戸惑った顔で私を見た。
「そうよね、夫婦なんだから、過去の傷やトラウマがあるなら、お互い共有するべきよね」
麻里奈さんは酔いが覚めたのか、しっかりした口調でそう言った。
そして、零士さんの過去を話し始めた。
「実はね、零士が連れ込んだって言われてた女の子は零士の当時の彼女だったの。本当はね、彼女が勝手に保健室で寝てる零士のベッドに潜り込んだだけなんだけど、学校にバレると、零士に無理やり連れ込まれたって嘘ついてね。零士は彼女を庇ってひとりで罪をかぶって、決まってた推薦まで取り消されたのよ」
「ひどい…」
「しかもその彼女、その後すぐに零士の親友と付き合い出しちゃって。それ以来、零士は本気で人を愛せなくなった。まあ、それでも零士はモテるから彼女は途絶えなかったけど、自分から彼女が離れていっても追いかけることもしなかったし、女なんてすぐに裏切るもんだってますます割り切るようになっちゃってね。鈴乃さんに出会うまでの零士は誰にも心を開けずに、トラウマのせいでとにかく苦しんでいたわ」
麻里奈さんが涙ぐむ。
私も零士さんが可哀想になって涙が零れてきた。
「いやいやいや、別にそういうんじゃないから。つうか兄貴も麻里奈の暴走を止めてくれよ」
困ったように零士さんが言うと、英士さんは零士さんの肩をガシッと掴んだ。
「そうだったのか、零士。兄ちゃん、何も知らなくて悪かった。これからは鈴乃さんにたくさん幸せにしてもらうんだぞ。子供も産まれるしな」
英士さんも涙を流した。
「だから…違うんだって」
零士さんが苦笑いを浮かべると、今度は麻里奈さんが私に言った。
「鈴乃さん、零士が本気で人を愛せるようになったのは鈴乃さんのおかげ。本気で追いかけてちゃんと向き合ったのは鈴乃さんだけなのよ。だから鈴乃さんも愛されてる自信を持ってね」
もしかしたら、この前私が元カノのことで零士さんに絡んでいたことをずっと気にしていてくれたのかもしれない。
「分かりました。ありがとうございます、麻里奈さん」
私が力強く頷くと、麻里奈さんはホッとしたように笑った。
「よし、言いたいことは全部言えたわ。英士、そろそろ仙台帰ろう」
「そうだな。最終の新幹線ならまだ間に合うしな」
「そういうことで、お邪魔しました~」
「じゃあ、悪いな。俺達急ぐから」
二人はそう言って、嵐のように去って行った。
「えっ!? これ零士さん? あっ、野球少年だった…とか?」
「違うけど…」
零士さんはバツの悪そうな顔をして私から目を逸らす。
「じゃあ、何でこの髪型?」
「それは…」
言葉を詰まらせた零士さん。
私は首を捻りながら再びアルバムへと視線を戻した。
卒業アルバムの中の零士さんは何故か坊主頭だったのだ。他のページのクラス写真の方はお洒落な髪型で写っているのに、個人写真だけはまるでお坊さんのように髪がない。
「生活態度が悪過ぎて先生に頭丸めて反省しろって言われたんだよ。ほら、もういいだろ」
零士さんがアルバムを急いで閉じると、英士さんが「あっ」と声を上げた。
「そうか。零士が保健室のベッドに女の子連れ込んで騒ぎになった時だな。今考えると、零士はホントにませガキだったよな」
英士さんが缶ビール片手に笑いながらそう言った。
「兄貴……鈴乃も聞いてるんだけど」
零士さんは怖ろしい顔で英士さんを睨みつけた。
英士さんはハッとしたように私を見る。
「あっ……ご、ごめんね、鈴乃さん」
何とも気まずい空気になった。
「いえ、あの……私なら大丈夫ですよ。中学生の頃の話ですし、思春期の男の子なんてそんなものですよね」
場の空気をこれ以上壊さないようにと笑顔を作る。
本当はちょっと複雑なのだけれど。
「違うのよ、鈴乃さん。零士は被害者なの」
「え?」
「麻里奈、もうその話はいいから。鈴乃も嫌な思いさせてごめんな」
零士さんは話を切り上げアルバムをしまった。
「あ、あの…聞きたいです。零士さんのことなら、何でも知っておきたい」
「鈴乃」
零士さんは戸惑った顔で私を見た。
「そうよね、夫婦なんだから、過去の傷やトラウマがあるなら、お互い共有するべきよね」
麻里奈さんは酔いが覚めたのか、しっかりした口調でそう言った。
そして、零士さんの過去を話し始めた。
「実はね、零士が連れ込んだって言われてた女の子は零士の当時の彼女だったの。本当はね、彼女が勝手に保健室で寝てる零士のベッドに潜り込んだだけなんだけど、学校にバレると、零士に無理やり連れ込まれたって嘘ついてね。零士は彼女を庇ってひとりで罪をかぶって、決まってた推薦まで取り消されたのよ」
「ひどい…」
「しかもその彼女、その後すぐに零士の親友と付き合い出しちゃって。それ以来、零士は本気で人を愛せなくなった。まあ、それでも零士はモテるから彼女は途絶えなかったけど、自分から彼女が離れていっても追いかけることもしなかったし、女なんてすぐに裏切るもんだってますます割り切るようになっちゃってね。鈴乃さんに出会うまでの零士は誰にも心を開けずに、トラウマのせいでとにかく苦しんでいたわ」
麻里奈さんが涙ぐむ。
私も零士さんが可哀想になって涙が零れてきた。
「いやいやいや、別にそういうんじゃないから。つうか兄貴も麻里奈の暴走を止めてくれよ」
困ったように零士さんが言うと、英士さんは零士さんの肩をガシッと掴んだ。
「そうだったのか、零士。兄ちゃん、何も知らなくて悪かった。これからは鈴乃さんにたくさん幸せにしてもらうんだぞ。子供も産まれるしな」
英士さんも涙を流した。
「だから…違うんだって」
零士さんが苦笑いを浮かべると、今度は麻里奈さんが私に言った。
「鈴乃さん、零士が本気で人を愛せるようになったのは鈴乃さんのおかげ。本気で追いかけてちゃんと向き合ったのは鈴乃さんだけなのよ。だから鈴乃さんも愛されてる自信を持ってね」
もしかしたら、この前私が元カノのことで零士さんに絡んでいたことをずっと気にしていてくれたのかもしれない。
「分かりました。ありがとうございます、麻里奈さん」
私が力強く頷くと、麻里奈さんはホッとしたように笑った。
「よし、言いたいことは全部言えたわ。英士、そろそろ仙台帰ろう」
「そうだな。最終の新幹線ならまだ間に合うしな」
「そういうことで、お邪魔しました~」
「じゃあ、悪いな。俺達急ぐから」
二人はそう言って、嵐のように去って行った。