俺様社長に甘く奪われました
「あのハンドクリーム、社長からもらったの?」
当然のことを志乃が質問する。
「……あ、えっと……なんかですね、中国へ出張していたたそうで、大量購入してきたハンドクリームが余ったからとか言って、社内でたまたますれ違っときにいただいて」
嘘から追い立てられるように早口で言い終えて、そこで初めて莉々子が志乃の顔を見ると、予想に反して笑顔を向けられた。
「そうだったんだ。それはラッキーだったわね」
志乃は変に勘繰って考えなかったようだ。
そのことに気を良くしてしまい、莉々子も「そうですね」と笑顔で返す。
「では、私たちも落成式の確認をしてしまいましょうかね」
木村の言葉に「はい」とふたり揃って返事をしたのだった。