俺様社長に甘く奪われました
望月はそう言って莉々子を回れ右させ、ベッドルームへと押し込んで引き戸を閉じた。
そうされて簡単に納得できることではない。着替えてどこへ連れていくつもりなのか、それを聞かなければ動きようがない。
閉められたばかりの引き戸を開き、莉々子は「教えていただけなければ、着替えられないです」といつになく強気に言い放った。
「教えたら、着替えて絶対に行くんだな?」
望月が目を細めて莉々子を見据える。その様子から、おすすめのスポットとはとうてい思えない。なにかいわくつきの場所ではないのか。
「……場所にも……よりますが……」
「用事が済めば、うまいものをご馳走してやる」
望月の言葉にぐらんぐらんと気持ちが揺さぶられる。フレンチトーストをお預けにされた空腹感が、莉々子を甘く誘惑した。どんなおいしいものなんだろうかと瞬時に想像してしまう。
「……それは本当ですか?」
「ああ」
望月が深くうなずく。