俺様社長に甘く奪われました
「……わかりました」
自分の意思の弱さに莉々子は自分で呆れた。
「そうと決まれば、早く着替えよう」
優雅に笑みを浮かべた望月が、莉々子の鼻先でドアを閉める。
おいしいものをご馳走してくれるという言葉に乗せられ、うっかりどこへ連れて行かれるのかを聞きそびれてしまった。しまったと思ったが、あとで聞けばいいだろうとすぐに楽観的に切り替えた。
気を取り直して紙袋からワンピースを取り出し、莉々子は自分の目の前にかざす。
「私に似合うのかな……」
清楚なイメージと自分とは、どうもかけ離れているように思えてならない。志乃だったらぴったりだろう。
志乃といえば、あのハンドクリームのやり取り以降、別段変わった様子はなく、望月と莉々子とのことを疑うようなこともない。
(私たちがあまりにも不釣り合いだから、妙な仲になりようがないと思ってくれたのかな。付き合おうと提案されたことも、社長の悪ふざけだと納得してくれたのかもしれないな……)
そんなことを考えながら着替えていると、痺れを切らせた望月から声を掛けられた。