俺様社長に甘く奪われました

「おい、まだか」
「あ、はい今……」


 莉々子が背中のファスナーを慌てて上げたところで、「開けるぞ」とドアが開けられた。
 彼女を見るなり、望月が目を瞬かせる。


「……似合わないですか?」


 なんの反応もないので莉々子が尋ねると、望月は「……いや」と言いつつ、ぎこちなく視線を外した。

(やっぱり似合わないのかな……。そうだよね、高級ブランドだし、似合っていないんだろうな)

 わかっていてもつい落ち込む。
 ところが望月が「よく似合ってる」とどこか照れたように微笑むものだから、莉々子まで恥ずかしさに頬が熱くなった。


 望月の車で連れてこられたのは、石塀に囲まれた建物の前だった。中はうかがい知れないが、屋根つきの門構えからして伝統的な日本家屋のように見える。看板には日本料理とあった。

(ここでおいしいものをご馳走してくれるのかな。あ、でも、着替えてからまだなにもしていないから違うかな)

 ひとりであれこれ思い悩んでいると、望月は運転席で莉々子へ身体を向けて「実は」と切り出した。

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