俺様社長に甘く奪われました

「今日ここで、見合いがあるんだ」
「お見合い?  どなたのですか?」
「俺の」


 望月がさらりと言って自分を指差す。

(社長のお見合いがこれからここで……? そこに私をこんな格好で連れてきたということは、つまり……!)

 莉々子は大変なことに気づいてしまった。


「む、無理です!」


 両手を大きく横に振って拒絶をアピールする。


「察しがいいな。だが、ここまで来てそれはないだろう。約束が違うぞ」
「それは私のセリフです。お見合いの席に乗り込むんですよね? そんな大それたことを私にはできません……!」


 莉々子が必死に訴える。勤め先の社長の見合いを破談にさせるという恐ろしいことをどうしたら莉々子ができようか。


「顔も知らないような相手との結婚が決まっているなんて、不憫だと思わないのか」


 望月が心情に訴えかける作戦に出てきた。眉尻を下げて、まるで雨に濡れた子犬のように莉々子を見つめる。

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