俺様社長に甘く奪われました
望月が小首を傾げる。
「ル・シェルブルのバイキングをご馳走してください」
そこのバイキングはたびたび雑誌でも紹介されていて、莉々子は一度行ってみたいと以前から思っていた。
「バイキング? それでいいのか? 高級フレンチとかイタリアンのコース料理じゃなくて?」
「いろんなおいしいものをたくさん食べたいんです」
静かすぎる店で緊張しながら食べるよりも、そのほうがずっといい。
望月はポカンとしてからゆったりと微笑み、「わかった。そうしよう」と言って運転席から降り立った。そのまま助手席へ回り込み、ドアを開けて莉々子を降ろす。
「俺のことは社長じゃなく、“奏多”と呼ぶように」
「奏多、さん……」
急に名前で呼ぶとは照れくさくてたまらない。とてもじゃないが、すぐには慣れない。うっかり“社長”と呼んでしまいそうだ。