俺様社長に甘く奪われました

「それと、驚く前に言っておくが、東条社長が同席している」
「えっ? 東条社長が!?」


 どうしてそんな大御所が?と驚かずにはいられない。見合いの相手は、親会社の朝菱商事にとっても大きな利益を生む相手なのだろうか。
 目を見開く莉々子に望月は「仲人だ」と答えた。

(な、仲人……。そんなすごい人の前で私、演技なんてできるのかな)

 大きな不安とこれまで感じたことのないような緊張が莉々子に襲いかかる。


「望月社長のご両親はいらっしゃらないんですか?」
「母親は来ている。よし、じゃあ行くぞ」


 お父様は?と聞こうとしたところで、望月に手を引かれた。屋根付きの門をくぐると、目の前がいきなり広く開ける。美しく丸みを帯びた松、綺麗に刈り込まれた芝生、真っ赤な橋が架かった池と、手入れの行き届いた日本庭園はいかにも高級料亭の佇まいだ。

 玉砂利に等間隔に配置された丸石を渡って入口の戸を開けると、着物姿の女性に出迎えられた。


「望月様、いらっしゃいませ」

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