俺様社長に甘く奪われました

 車の助手席に乗ったところで、ようやく莉々子の震えが収まった。ホッとしたら急にお腹が空いた気がする。そういえば、フレンチトーストを食べている途中だったことを思い出した。


「このあと、ご馳走してくださるんですよね?」


 ル・シェルブルの豪華ランチバイキングを。


「そんな怖い顔して脅さなくてもご馳走するよ」


 ギアをドライブに入れながら望月がからかう。


「脅してなんて……」


 空腹のせいでほんの少しだけ恨めしげに望月を見たことは認めるが。


「さっきの決め台詞も毅然としてたな」
「……決め台詞ですか?」
「『奏多さんとお付き合いさせていただいております』ってやつ。あの空気の中、あそこまできっぱりと言い切れる度胸はなかなかだ」


 そのときの光景でも思い出しているのか、望月の頬に笑みが滲む。

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