俺様社長に甘く奪われました
「一生懸命だったんですから、からかわないでください……」
思い出しただけでも震えてしまう。東条の怒りに満ちた顔は、今でも莉々子の脳裏にびっちりと焼きついているのだ。
「からかってないぞ。誉めているんだ。褒美として好きなだけ食べるといい」
「……バイキングですから、好きなだけ食べられて当然です」
金額に関わらず食べ放題だ。
莉々子が眉間に皺を寄せて頬を膨らませると、望月は楽しげに「ははは」と笑った。
たらふく食べるぞという意気込みで胸を膨らませつつ、ル・シェルブルのエントランスをくぐる。ランチバイキングのレストラン目指してホテル内を闊歩していると、向かいから歩いてきた男性が軽く手を上げてふたりの前で立ち止まった。
「奏多じゃないか。昼間にここで見かけるなんて珍しい」
「京介こそ、今日もこっそり抜き打ちチェックか?」
望月の知り合いのようだ。スラリとして望月並みに背が高く、優しげな目が印象的な整った顔立ちだ。