俺様社長に甘く奪われました
「まぁそんなところかな」
そういって『京介』と呼ばれた彼が柔らかく微笑むと、まるで絵本から抜け出た王子様のように見える。望月とふたりが並んで立つとそれだけで華やかで、現実とは違う場所に存在しているようだ。莉々子たちの横を通り過ぎる人たちも、みな一様にふたりを羨望の眼差しで見ていた。
「こちらは?」
不意に莉々子へと彼の目が向けられ、背筋が伸びる思いがする。
「く、倉木莉々子と申します」
「俺の恋人」
望月がふざけて肩を引き寄せるものだから、莉々子の足元がぐらついてその胸に抱き込まれてしまった。
「な、なにを言ってるんですか」
慌てて体勢を立て直して囁く。
「なにって、ついさっき俺と付き合っていると宣言してきたばかりだろう」
「ですからそれは……!」