俺様社長に甘く奪われました

 あくまでも演技だ。結婚を回避するためのかりそめの恋人。

 くだらない言い合いをしていると、京介からクスクスという笑い声が聞こえてきた。


「そうやって軽い調子で女性とやり取りしている奏多を初めて見た」


 京介の言葉に莉々子は唖然とする。
 確かに会社ではあまり笑わない。今と印象もずいぶんと違うが、恋愛経験は豊富そうだし、女性慣れもしていそうなのに。
 意外なことを聞いて、つい珍しい目で望月を見ると、彼は不服そうな顔を京介へ向けた。


「余計なことを言うな。莉々子、こっちは芹川京介。ル・シェルブルの副社長だ」


 望月に紹介されて、彼が「芹川です」と名乗り直す。
 揃ってハイスペックなのだから、ふたりのオーラが共通して華やかなのも当然だ。


「それじゃ、ラウンジでピアノを弾いているのは……」
「そう。京介にお願いされてね」


 確か、高校時代の同級生だと言っていた。

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