俺様社長に甘く奪われました

「異臭の件で参りました」


 そう言ってから莉々子が息を吸い込むと、それほど強烈ではないものの確かに変な匂いがした。焦げ臭いというか、煙っぽい匂いだ。

(いったいどこからこんな匂いがするんだろう……)


「では、私は下がりますので、くれぐれもよろしくお願いしますね」


 上田が退室し、莉々子は望月とふたりきりになってしまった。

(いっそのこと社長も出て行ってくれるとありがたいのにな。さすがに社長とふたりきりだと緊張しちゃう。松永くん、早く来てくれないかな……)


「キミにわかるのか?」


 望月も莉々子ひとりでは心配なのだろう。おろおろとした彼女の態度からも、設備関連に関しては見るからに素人。不安を覚えるのもわかる。望月は目を細めて訝った。


「……あ、えっと、申し訳ありません。すぐに担当の者は参りますが、先に状況を確認しようと思いまして……」


 莉々子が上田のときと同じように答える。
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