俺様社長に甘く奪われました
望月はまだ納得がいかない様子で彼女を鋭く見つめた。早くしてくれという空気が漂い、ものすごく居心地が悪い。匂いの種類はわかっても、それがどういう原因なのかは莉々子にはわかりようもない。
「あの、いつからこんな匂いがしていましたか?」
場つなぎの質問をすると、望月は「少し前だ。出勤してきたときは匂わなかった」と答えた。
「そ、そうですか……」
そこでほかになにを聞くべきかわからず、沈黙が訪れる。
(松永くん、お願いだから早く……!)
祈りにも近い思いで莉々子が待ち焦がれていると、社長室のドアが忙しなくトントン!とノックされた。
(やっと来てくれた!)
入ってきた松永を見て思わずパッと顔を輝かせる。
「莉々子さん、どうですか?」
「ちょっと煙っぽい匂いはするんだけど……。社長が出勤されたときには匂わなかったみたいなの」