俺様社長に甘く奪われました
鼻をクンクンさせた松永が「あぁ、これは!」と、なにかひらめいたように手のひらを拳でポンと叩いた。
「実は、少し前に木村部長が地下でチェックのために自家発電を稼働させたんです。恐らくその匂いがダクトを通って社長室にまできてしまったのかと思います」
(なるほど。この匂いは自家発電のせいだったのね)
すぐに原因がわかってホッとした。
「もう止めていますので、しばらくしたら匂いも消えると思います。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「一時間後に来客があるんだが」
それまでに匂いが消えるのか心配なのだろう。望月は少し不満そうに片方の眉をピクリと動かした。
「数十分もあれば大丈夫かと思います。本当に申し訳ありません」
松永がそう答えると、望月は「そうか、そういうことならば仕方ないだろう。来てもらって悪かったな」と労った。
「いえ! なにかございましたら、いつでもお呼びください。では、これで失礼いたします」