俺様社長に甘く奪われました
◇◇◇
翌朝、莉々子は出勤してすぐに松永を総務部の部屋から連れ出した。
「ねぇ、昨日の話、もう誰かに話しちゃった?」
「そりゃあもちろん、里穂には話しましたよ。俺たちの中に隠し事はありませんから」
松永が親指を立ててニッと笑う。
やっぱり遅かった。昨夜のうちに手を打っておけばよかったと莉々子はため息を吐いた。
「里穂ちゃんにだけ?」
「はい、今はまあそうですけど」
「これ以上は広めない方がいいと思う」
既に知っている人はいるだろうが、いたずらに騒ぎ立てる話じゃない。
「え? どうしてですか? 大スクープなのに」
不満そうに彼が口を尖らせる。
「人の生い立ちは、面白がって話すようなことじゃないでしょう? 自分に置き換えて考えてみて」