俺様社長に甘く奪われました

 松永はしばらく考え込むようにしてから、「そうですね、わかりました」と意外と素直に納得してくれた。


「それじゃ、本当にお願いね」
「了解です」


 松永と連れだって莉々子が席に戻ると、志乃から「なにかあったの?」と突っ込まれてしまった。


「あ、いえ……。ちょっと仕事のことで確認したいことがあって」


 これといった理由が思い浮かばずに漠然とした回答をすると、少し不審そうな目をしていた志乃は「そう」とすぐにいつもの表情に戻った。
 同じ高校出身の志乃は隠し子のことを知っているかもしれないが、わざわざ取り立てて聞くことはないだろう。


「それじゃ私は、経営戦略室にちょっと行ってくるわね」


 志乃はそう言って席を立った。

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