俺様社長に甘く奪われました

「とにかくおめでとう。これで私も安心できるわ」


 真紀はそう言いながら、莉々子のグラスに自分のグラスを合わせた。


「あ、志乃さんだ」


 ふと真紀が店内の一点を見て呟く。
 振り返って莉々子が店内に視線を泳がせると、そこには入ってきたばかりの志乃が店員に案内されているところだった。


「志乃さん!」


 莉々子が手をあげてヒラヒラ振ると、志乃は「あら、ふたりも来てたの?」と顔を綻ばせる。


「はい。志乃さんはおひとりですか?」
「そうなの。莉々ちゃんからこの店を教えてもらってから、ひとりでよく来るの」
「よかったら、ご一緒しませんか?」


 真紀に目で確認してから、志乃を誘う。


「いいの? それじゃお言葉に甘えて」


 志乃は莉々子の隣に腰を下ろした。

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