俺様社長に甘く奪われました
松永と揃って頭を下げ、莉々子たちが望月に背を向けたときだった。
「ちょっと待て」
不意打ちで望月が呼び止める。
「……なにかほかにもございますか?」
松永が首を傾げながら振り返ると、望月はおもむろに立ち上がりふたりのほうへとずんずん歩み寄る。足が長いせいか、ほんの数歩で目の前へとやってきた。莉々子の足だったら十歩は必要だろう。
「そこのダクトに埃がたまっているように見えるんだ」
望月はそう言って莉々子のすぐ横の壁にあるダクトを指差した。
「……本当ですね」
莉々子たちが見上げるようにすると、細かな鉄格子には確かに埃が付着している。もしかしたら中はもっと汚れているかもしれない。
「お客様がいらっしゃるまで、あと一時間あるとおっしゃいましたよね?」