俺様社長に甘く奪われました

 松永の質問に望月が「……ああ」と答える。


「奥のほうはまた後日ということで、ひとまず手前の方だけでも掃除させていただけないでしょうか? 埃がお客様の目に留まることはできるだけ避けたいので」


 望月の来客ならば企業のトップクラスがメイン。そんな人たちに会社の不備は見せたくないという松永の意見には、莉々子も賛成だった。清掃が行き届いていないのは、一番の減点ポイントだ。


「時間がかからないのであれば頼む」
「すぐに準備しますので少々お待ちくださいませ」


 道具を取りに行こうと社長室を出ようとした松永を莉々子が「待って」と小声で引き留める。


「私が取りに行ってくる」


 異臭事件に首を突っ込んだ手前、このあとを松永ひとりに押し付けてしまうのは気が引ける。だが、社長室にふたりきりになるのはできれば避けたい。


「え? でもわかりますか?」
「脚立と掃除用具で大丈夫?」
「あとはドライバーも必要ですね」

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