俺様社長に甘く奪われました
松永の指示にうなずいた莉々子は急いで総務部に戻り、指示されたものを社長室へ運び込む。
早いところ終わらせないと、望月から部にクレームでもきたら大変。
そんな焦りがあったからか、莉々子は脚立を社長室の壁にコツンとぶつけてしまった。その瞬間、社長室が暗闇に包まれる。照明のスイッチを脚立で押してしまったみたいだ。窓にブラインドが下ろされているため、かなり薄暗い。
「おい、なにしてるんだ」
「も、申し訳ありません」
険のある望月の口調に莉々子がビクンと肩を震わせていると、松永が慌ててスイッチを探った。すぐに室内が明るくなった途端、望月が細く長く息を吐き出す。
(……もしかして暗いのが苦手なの?)
呆気にとられていると、望月から「早く済ませてくれ」と急かされ、「は、はいっ」と松永に道具を手渡した。
「莉々子さん、プラスのドライバーを取ってもらってもいいですか?」
「はい」
道具箱から指定のものを取り、莉々子が彼に手渡す。