俺様社長に甘く奪われました
「そんなことはないと思いますけど……」
奏多の本質に目を向ける女性は、ほかにもいただろう。
「もう会えないだろうと思っていた莉々子を三年ぶりに会社で見つけたとき、俺がどんな気持ちだったかわかる?」
奏多の質問に莉々子は首を横に振った。まったく想像もつかない。
「わからないので教えてください」
奏多は少しだけ困ったように笑いながら、静かに話し始めた。
◇◇◇
日系企業向けの工業団地の分譲計画を進めるために、奏多が中国と日本の行き来をして多忙な毎日を送っていたときのことだった。
久しぶりにやってきた本社で、取締役たちとの打ち合わせに向かうエレベーターを降り、なんとはなしに向けた視線の先に奏多は思いがけない人の姿を見つけた。思わず立ち止まり、彼女をじっと見つめる。
(……人違いか)
一瞬そう思った。