俺様社長に甘く奪われました
彼女につながる手がかりがいっさいないまま、二年半が瞬く間に過ぎていった。そして今日、その彼女が再び奏多の前に――。
「上田さん、あそこを歩く右側の彼女の名前は?」
遠くなった背中を指差し秘書の上田に尋ねる。
「えっと……彼女は最近総務部に異動してきた、倉木莉々子さんだと思います。……彼女がなにか?」
「……いや、特にない」
「では、取締役たちがお待ちですので急ぎましょう。それが終わり次第、午後八時の便で中国となっております」
「わかってる」
上田にうなずき、ある誓いを胸に、彼女が去った方とは反対方向へ足を向けた。
◇◇◇
「中国の案件がひと段落したら、絶対に莉々子を手に入れると」
上体を起こした奏多が莉々子を組み敷く。
「……泣き顔が気になっただけでですか?」
「そのときはそうだった。とにかく莉々子をあんなふうに泣かせるようなことから守りたいと。だが、それから社内でも莉々子の懸命に働く姿を見かけるうちに、その想いがどんどん強くなっていったんだ」
「そんなに前から私のことを見ていてくれたんですね……」