俺様社長に甘く奪われました

「ハンディークリーナーを取ってください」


 次々と言い渡される松永の指示に莉々子はてきぱきと手を動かす。それもこれも、望月が見ているからと焦るせい。緊張で手が震えているのも事実だった。

 およそ二十分後、松永によりダクトの清掃が完了。


「大変お待たせいたしました。また改めてクリーニングはさせていただきますので、今日はこれで失礼いたします」


 ふたり揃って頭をさげて退室しようとしたところで、「ちょっと待ってくれ」と望月に再び呼び止められた。


「まだどこか不具合が……?」
「いや、キミじゃない」


 尋ねた松永に望月が首を横に振る。そしてその目は、莉々子へと向けられた。
 いったいなんだろうかとドキッとさせられる。


「ちょっと残ってくれ。航空券の手配を頼みたい」


(……こ、航空券。なんだそんなこと)

 莉々子はホッと胸を撫で下ろした。

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