俺様社長に甘く奪われました
◇◇◇
その週の水曜日。定時に仕事を終えた莉々子がエントランスを出ようとしたところで、奏多から着信が入った。立ち止まり、バッグからスマホを取り出す。
「莉々子です」
『今どこだ』
奏多に聞かれ、「ちょうど会社を出るところですが……」と答える。
『それじゃ、地下駐車場の出入口あたりで待っててくれ』
「……えっ」
莉々子が戸惑っているうちに、奏多は『じゃ』と電話を切ってしまった。
多忙な奏多がこの時間に帰るのは稀なこと。いったいどうしたのだろうかと莉々子は首を傾げた。
そうして五分が経った頃だった。地下駐車場から一台の車がスロープをゆっくりと上がってくる。奏多専用のハイヤーだった。莉々子の前で止まった車の後部座席から奏多が降り立ち、腰に手を添えエスコートする。
そんな扱いにくすぐったい気持ちになりながら、莉々子はシートに身体を預けた。