俺様社長に甘く奪われました

 隣に座った奏多が莉々子の肩を引き寄せ、もういっぽうで手を握る。高級車の後部座席に乗ることが初めてなら、こうして男性と身体を寄せ合って乗るのも初めて。莉々子は思いがけない状況に身体を固くした。


「そんなに緊張する必要はない」
「ですが、こんなことは初めてなので……」
「これまでに経験していたと言われるよりはずっといい」


 そう言って奏多が莉々子の髪にキスを落としたものだから、ビクンと肩が弾む。運転手にルームミラーでみられたら恥ずかしいと莉々子が不安を感じているそばから、目の前にグレーの壁が突然現れた。


「これって……」


 運転席と後部座席の間が完全に隔てられると、奏多は「これならいいだろう?」と今度は莉々子の唇に唇を押し当てた。


「……か、奏多さんっ」


 莉々子が思わずその胸を押し返す。


「どうして」


 奏多は不満そうに目を細めて莉々子を見つめた。

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