俺様社長に甘く奪われました
「……よかった」
放心した莉々子の全身から力が抜けていく。椅子に座りながらも、空気の抜けたビニール人形のように手足がだらんとしてしまった。それでもなんとか背筋に力を入れて頭を下げる。
「ありがとうございました」
「莉々子のためなら、なんてことはない」
サラッと言って奏多がニヒルに笑う。
奏多がいなかったら、きっとなんの手配もできないままだったに違いない。そして、セレモニーは大失敗に。
ホッとしたら莉々子の鼻の奥がツンとしてくる。涙を堪えていると、奏多は莉々子の頭を優しく撫でた。
「よし、俺たちも向かおう」
手を取り、奏多が莉々子を立たせる。「はい」とうなずき、ふたり揃って総務部をあとにした。
タクシーに乗ること一時間。莉々子たちはセレモニー会場である新千葉物流センターへと降り立った。
奏多によると、京介のホテルのスタッフが備品を現地に直接届けてくれるという。
車中で木村に一報を入れたものの、莉々子の姿を見つけるや否や松永が駆け寄ってきた。