俺様社長に甘く奪われました
「よかったじゃないですか! もう、一時はどうなることかと思いましたよ!」
「本当にごめんね。ご心配をお掛けしました」
「ったく、莉々子さんときたら、怪我の次は備品の手配ミスなんて勘弁してくださいよぉ」
そう言われてしまうと莉々子は返す言葉もない。ただ小さくなるばかりだった。
「それにしましても、望月社長、この度は本当にありがとうございます」
木村が奏多に平身低頭、頭を下げる。志乃もそれに続いた。
「いえ、たまたま総務部に顔を出したからよかったです」
「本当に社長は莉々子さんの救世主ですね」
松永がおどけて笑う。
本当にそのとおりだ。困っているところに必ずといっていいほど、奏多が現れる。まるで莉々子のピンチを察しているかのように。
「社長、本当にありがとうございました」
莉々子がもう一度頭を下げると、「まだセレモニーは無事に済んでないぞ」と釘を刺す。
「……そうですよね」