俺様社長に甘く奪われました
備品類が届いたら、すぐに会場をセッティングしなければならない。予定時刻を大幅に押しているから急がなくては。
「では、私は接待がありますので」
「お忙しいところありがとうございました」
木村の言葉に奏多は軽く手をあげ、莉々子たちの前から歩いて去った。
そこで少し離れたところに立つ志乃と、ふと目が合う。
「志乃さん、ご心配をお掛けしました。なんとか手配はできました」
「よかったわね」
彼女の口元がニッと持ち上がる。
「ほんと莉々ちゃんってば、運がいいんだから。ここぞというときに社長が現れるなんてね」
「はい、本当に」
肩をすくめると、志乃はじっと莉々子を見つめてから柔らかく微笑んだ。
それから三十分と経たないうちに、四トントラックがセンターに入ってきた。ル・シェルブルのロゴが入ったトラックだった。
松永が会場となる場所まで誘導すると、すぐに手分けして荷台から備品類を下ろす。
時刻は十一時半。急がなければ間に合わなくなる。